アールヌーボーが衰退した理由
アールヌーボーは、19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパを中心に流行した芸術様式です。
自然の曲線や有機的な形をモチーフにした流れるようなデザインが特徴で、建築、家具、インテリア、ガラス工芸、ポスターなど、様々な分野で華やかな花を咲かせました。
しかし、第一次世界大戦を契機に、アールヌーボーは急速に衰退していきます。
世界大戦のあと、衰退してしまったんだね
アールヌーボーが衰退した理由は、第一次世界大戦の勃発と、それに伴う社会や経済の変化にあります。
順番に解説していきます。
理由1:第一次世界大戦による社会の変化
まず、第一次世界大戦による社会の変化は、人々の芸術に対する関心を変化させました。
戦争による経済的困窮や価値観の変化は、装飾性よりも実用性や機能性を重視する風潮を生み出し、アールヌーボーのような華美な装飾は時代遅れと見なされるようになりました。
装飾よりも実用性!
理由2:大量生産が求められる時代になった
さらに、アールヌーボーは手作業による精巧な装飾が特徴でしたが、第一次世界大戦後は大量生産を求められる時代になりました。
大量生産に適さないアールヌーボーは、コスト面でも不利となり、市場から淘汰されていくこととなります。
手作りではコストがかかる…
理由3:好まれるデザインの変化
これらの要因に加え、アールヌーボー自体が抱えていた問題も指摘できます。
アールヌーボーは、自然のモチーフを積極的に取り入れた芸術様式でしたが、第一次世界大戦後の社会では、人工的な素材や色彩を好む傾向が強まりました。
アールヌーボーは装飾性に重きを置くあまり、機能性や実用性を軽視する傾向もありました。
これらの理由により、アールヌーボーはかつての華やかな姿を失い、衰退していくこととなりました。
このため、アールヌーボーのような装飾重視のスタイルは次第に受け入れられなくなり、新しい様式である「アールデコ」などが人気を博すようになりました。
アールデコは、よりシンプルで現代的なデザインを特徴とし、アールヌーボーとは対照的なスタイルを代表しています。
アールデコについてはこちら
アールヌーボーが衰退したことで起きた変化
アールヌーボーは、第一次世界大戦のあとで急速に衰退していきます。
人気だったアールヌーボーが衰退したことで、デザインの世界に以下の大きな変化が起こりました。
機能主義への転換
アールヌーボーは、装飾性や美しさに重きを置いていましたが、第一次世界大戦後の社会では、実用性や機能性を重視する風潮が強まりました。
その結果、アールヌーボーに代わって、機能主義と呼ばれる「アールデコ」という新しいデザイン様式が主流となります。
素材の革新
技術革新により、プラスチックや鋼鉄などの新しい素材が開発されました。
これらの素材は、従来の素材よりも軽量で耐久性に優れており、新たなデザインの可能性を広げました。
大量生産の普及
大量生産技術の発展により、家具や食器などの日用品が安価に生産されるようになりました。
これにより、多くの人がデザイン性の高い商品を手に入れることができるようになり、デザインの民主化が進みました。
アールヌーボーの衰退は、デザイン史における大きな転換点となりました。
アールヌーボーは現代でも生きている
アールヌーボーは一時的に衰退しましたが、その美しさと影響力は今日にも生き続けています。
その証拠に、現代の建築物やデザインの中に、アールヌーボーのエッセンスを見つけることができます。
またこの芸術様式は、自然の美しさを取り入れ、細部にまでこだわるという観点を現代のデザイナーやアーティストにもたらしました。
アールヌーボーは、時代を超えて、私たちの周りにその息吹を残し続けているのです。